高谷 直樹さん

高谷 直樹さん

福井県南越前町今庄で生まれ育つ。現在は、家業であるタカヤ洋服店を営みつつ、近年、土産店「SHOP山麓郷」を開業。今庄駅からまっすぐ伸びる通り沿いにある店舗には、地酒やそばなど地場産のお土産が並んでいます。自営業として店舗を経営する傍ら、地域のマルシェイベントである「宿の市」を中心メンバーとして開催しています。

福井県南越前町今庄に生まれ育った高谷 直樹さん。高校を卒業するまでは地元にいたものの、大学進学、就職で地元を離れました。30歳になる年に家業を継ぐために地元に戻られました。

その時に高谷さんが感じたのは、地元が寂しくなりつつあると言うこと。今庄でこれから育つ子どもたちに活気ある街を残したい。そう考える高谷さんの暮らしを聞いてみました。

自営業は暇やと思われている。
暇ではないんやけど、時間の融通はきく。

自営業をやっていると、地元の団体へのお誘いが多いですね。地元の団体はどこも人手不足。都会に出て、地元に戻ってきた私はどこにも所属してなかったから、誘いやすかったんでしょう。消防団、商工会、NPO法人など、様々なお誘いをいただいたので、いろいろ関わるようになりました。会社員ではなく自営業なので、時間の融通はきく。だから、こういったものにも参加しやすいということはあります。

自営業では、洋服とギフトを扱っています。洋服は、昔はオーダーメイドで繁盛していました。もう一つの柱はギフト。これはお中元、土産物の販売です。これからの時代は洋服よりもギフトを伸ばしていくしかないかもと考えています。

様々な地元の団体に関わっているから、忙しいのは忙しいですよね。3年前から妻が会社員を辞めてお店を手伝ってくれているから、しんどくなくやっていけています。ただ、会社員の給料という固定収入がなくなって生活は苦しくなったし、地元で商売を続けていくのは本当に大変。今の時代、魅力的な店ならSNSとかで見て、どこからでも来てくれるから、お店次第だとは思うけども大変なのは大変ですね。

私の商売は結婚式とかお葬式とかのギフトが中心なので、人とのつながりが大切なんです。だからこそ、商工会や関わっている団体やイベントなどで人とのつながりができたことで、カタログを渡せる人が増えたというのは大きいですね。

神輿を軽トラに載せて地域をまわる。
その姿が衝撃だった。

私が地元に戻ってきて衝撃的だったのが、神社のお祭。今庄には神社が2つあって、5月の連休のときに神輿を出してきて、町内を回ります。これは地域を守ってくれる神様に地域を見せるという意味合いです。この神輿を先導する役割として天狗のお面を被って神輿の前を歩くというのがあります。私が地元に戻って5年目くらいのときに、この天狗の役をお願いされました。そこで知ったのが、神輿を軽トラに載せて運ぶと言うこと。神様を運ぶのが人ではなく軽トラであることに疑問を感じました。疑問を感じながらも3年ほどはその形でやっていたのです。その当時、神輿のまとめ役の人にこの疑問をぶつけても返ってきた答えは「日当を払っても来てくれる人がいない。」ということ。それと同時に30人集まれば神輿は担げると言うことも教えてもらいました。

同じ頃、他の町の和太鼓のチームに入っていて活動していたのですが、そこに大きな神社の神輿に力を入れている人がいました。彼に相談したところ「軽トラなんかあかん。地元には氏神さんがいて、それを大切にせんと街は廃れる」と言われたのです。

それを聞いて「なんとかしないといけない」と本気になりました。そこで、神輿の担ぎ手を広く募集するのではなく、知っている人たちに個別に声をかけ、なんとか30人集めたのです。そこから10年くらい、新型コロナウイルス感染症で中止になるまで毎年続けることができました。

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