高野 久子さん
江戸時代から続く評判の甘露梅肉と、紅梅液(梅の砂糖漬果汁)を昔のままの土蔵で作る高野由平商店のおかみさん。街道のメインストリートに面する立派な面構えのお店には常連客が訪れます。
古く江戸時代から続く宿場町である今庄宿。ここが宿場町として栄えた300年前から、変わらない味で梅肉を作り続けるのが「高野由平商店」の高野さん。かつて、宿場町であった時代に宿屋をしていた高野家で、宿泊客にお土産としてお渡ししたのが梅肉の始まりと言われています。そんな古くから味を守り続けるのは、高野家の女性の仕事。高野家に嫁ぎ、伝統の味を守ってきた高野久子さんに、いくつになっても元気に仕事ができる暮らしを聞いてみました。
この梅肉には、
この宿場町の歴史が詰まっています。
昔、宿場町だった頃、うちの家は旅籠という宿泊施設を運営していました。そこに泊まってくださった方とかに、お茶を出して振る舞ったり、お土産としてお渡ししたのが、この梅肉の始まりですね。その後、国鉄(現JR)が開業したので、宿場町に人が泊まらなくなりました。そういうこともあり、商売としては弁当や梅肉を駅で売るように変わっていきました。これが明治30年頃の話です。そこから続いているので、私たち夫婦で10代目にあたります。かつて、この今庄宿の近くに、福井県内で梅が有名な若狭地方にあった小浜藩の飛び地がありました。そこに訪れた小浜藩の方に「梅を使ったらどうか」と勧められ使うようになったと聞いています。だから、今でも若狭の梅を使っています。
作るのに3年間かかる。
自然の力を利用してゆっくりと
時間をかけて味を出しています。
家の後ろに土蔵があって、そこで作ります。梅を仕入れたら、まずは、砂糖漬け。そうすると、1ヶ月後に汁がでるから、液体と実をわけて3年ほど熟成させるのです。
以前に福井県立大学の先生が酵母を調べたいと来られたことがありました。良い酵母が見つかったということで、その酵母をもとにワインやビールを開発されていました。あとは、パンも作っていらっしゃいましたね。私たちは、蔵に酵母があるというのは知らなかったですが、漬けた梅は何年経っても腐らないですね。それは酵母が働いてくれているということを大学の先生に教えてもらいました。
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